2023年7月27日木曜日

西沢渓谷に行ってきました

自分にとって長年の夢であった西沢渓谷に行ってきました。(長年の夢というか、私の名字が西沢なので子供の頃から意識していた場所)

ネットや書籍で西沢渓谷を下調べすると行程は約4時間、難易度は★★☆☆☆(やや易しめ)とのこと。

もはや体力に自信がある年齢ではないので悩みましたが、「今の自分が一番若い」というどこかの結婚相談所の名言を思い出し、行かねばもうチャンスはないだろうと考えて決断しました。


渓谷の道は一方通行で細いとある。

歩くのが遅いであろう自分と家族が、他の慣れた登山者の迷惑にならぬよう平日の朝6時にスタート。

私が先頭で早朝の蜘蛛の巣を体にまといながら歩き、高速道路を初めて運転した息子、一眼レフを持つ娘、妻と4名が連なって歩く。

すぐに驚いたのは、猛暑の都会とは別格の空気。涼しい風がこんなに気持ちいいとは…。

駐車場から誰にも合わずにスイスイと歩き続け、足の裏が痛みやすく不安だった自分にとって最高のスタート。あ~気持ちがいい。

ほどなくして標識に辿り着く。

「西沢渓谷」



自分は渓谷をだいぶ進んだと思っていたのだが、なんとここが入り口だったのだ。

楽しそうに写真を撮っている子供たちには余裕が感じられたが、自分はすでに冷や汗である。

(ここから4時間だとしたら足が持たない…)


渓谷というだけあって、歩道の片側は崖になっている。遥か渓谷の下から沢の音が聞こえ、落ちたら怪我では済まなそうだ。

落石の痕跡や滑り落ちてきた倒木が背景として緊張感を与えてくれる中、足元のでこぼこ岩や根っこの形状に注意しながら進んでいく。

都会では単なる遅い移動手段だと思っていたが、自然の中では歩くことそのものがアスレチック。(一歩一歩をどこに接地させるかの連続がこんなに楽しいなんて…)


一心不乱に歩いていたら知らぬ間に徐々に下っていたようで川面が近くなってきた。ふと見れば、深くなっている箇所が怪しい緑色となっていて、神々しい輝きを放っている。

「エメラルドグリーン」


後続の家族を待つと称して岩の上でしばし休憩。自分たち以外に誰もいないので自由なペースで休憩できる事にはだいぶ助けられた。

木々の僅かな隙間から岩の上の自分に日差しが当たり、そちらを向くと光のラインが幾重にも重なって西沢渓谷をより美しく見せてくれている。


追いついてきた息子にここから太陽を見てごらんと伝えて特等席を譲る。おー…と感嘆し、娘と妻も順にその場所で写真を撮っている。

自分はこの隙に距離を稼ぐために歩き出した。


このあたりからしばらく水面と同じ高さのコースが続く。

自然の上を歩いているようだが、平らな岩が歩幅にあった絶妙な位置にあることから、山男が日常的に整備してくれているのを感じる。感謝しつつ疲れた体を前に進めていく。

泥道ゾーンでは通気性のいい靴を履いていた息子が靴下が濡れたと言っていた。


地図に奇岩ありと記された場所に着く。


立ち止まって行程を確認すると、まだ半分に達していない。

すでに弱点である足の裏が痛みだしており不安を感じるが、家族はみんな余裕があるようで笑顔が絶えない。ここに来て良かったと思いつつ、自分のトラブルが楽しさのボトルネックにならぬよう先を急ぐ。


はじめて家族以外の人に会った。私より年上の男性だ。滝で写真を撮ると、すぐまた歩き出す。二度と追いつけなかったので、自分たちのペースが一般と比べるとだいぶ遅いと認識できた。

混んでいる曜日や時間帯じゃなくてよかった。とてもじゃないが自分はこれ以上ペースを上げられない。


折り返し地点が崖崩れの復旧工事で閉鎖中のため、用意されていたショートカットコース。これが急坂、いやほとんど崖に感じられるコースだった。

ここが自分にとって本当に堪えた。

ロープを頼りに重い体を引き上げていくのだが、足が思うように上がらない。上を見上げてもゴールが見えないので、途中で動けなくなったらどうなってしまうのかと不安になった。

普段は大人しい妻が「先頭、遅いぞ~」と後方から声を上げ、おかげでファイトが湧いてきた。

私達のような素人のためにロープや段差を作ってくれた山男のおかげで足が止まるシーンは一度もなかった。最後の数メートルはしっかりした手すり付きの階段まで用意されていて、山男の皆さんおよび文明のありがたみを感じた。

後で写真を見直すとそれほど急坂でもないように写っていたが、私としてはまさに這い上がっていった感覚で、登りきった後はものすごい達成感があった。


登りきったらトロッコの線路が残っている平らなコースだ。トロッコが走るのだから、ここから平地が続くのだろう。


しばらく進むと展望台なる開けた場所に辿り着く。ちょうど人数分のベンチがあり、おのおの横になったりして休憩する。

この休憩がなかったら完走できなかっただろうと思えるくらい、自分にとって気持ちのいい時間となった。


青い空の下で横になることがこんなに気持ちがいいなんて…。

改めて、平日の早朝、空いている時間帯を選んでよかったと思った。


キャタピラ付きの小型車両が二台走ってきたので道を譲る。

きっとこの人たち(山男というより会社の上司部下といった印象)が我々のために整備や復旧をしてくれているのだろう。朝早くから本当にご苦労さまですと心の中で感謝する。


標識に「ここで彦一が馬と落ちて大怪我をした」と記してあり、下を見るとよく怪我で済んだなと思うレベルの谷底一直線。

最後まで無事に完走して、この西沢渓谷を素晴らしい思い出にせねばと念じながら歩き続ける。


西沢渓谷の看板まで戻ってこれた!

これからスタートすると思われる人達がちらほら準備をしている。なぜか閉じているゲートを通過して車で入ってきてるので、ここから遠い駐車場まで歩く身としては羨ましく感じる。(なので、たぶん関係者なのかも知れない)


駐車場の寸前で足の痛みが限界に達し、家族全員に抜き去られたが、どうにか自力で車に辿り着けた。

疲労感が強かったので運転を息子に任せ、宿に向かったのであった。

-終わり-

が、妻と娘が買い物したいと寄り道。むちゃくちゃ元気だったので、その余力に驚いた。

限界だった自分は先に宿に行き、ロビーで静かに目をつぶっていました。

家族と合流した後に朦朧としてしまい、楽しみだったウェルカムケーキを食べることなく、部屋でバタンキュウ爆睡してしまった事が悔やまれる…。

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