何もかもイヤになった俺はもう何もしないことに決めた。
電気が止まり、ガスが止まり、やがて水道が止まった。
天井をずっと見ていると、悔しかったことばかりが思い出されるので目を瞑る。
変色したマヨネーズを吸ったのが最後、もうなにも口にしていない。
仮に空腹を満たしたところで、すでに詰んでいる俺の人生にはなんの進展もないだろう。
長引かせたところで…、それは長引くだけ、それだけだ。
(?)
ふと起き上がれないことに気が付いた。
寝返りならできるかもしれないと反動をつけるが、体は何一つ、指一本すらも動かない。
背中にあるはずの畳の感触がない。
どうなっているんだ?と目を開けてみる。
自分以外にはどこまでも続くどんよりとした灰色があるだけだ。
天井も床も台所も、自分以外みんな消えてしまった。
そもそも本当に目が開いたのかさえ怪しい。
危機感っていう感情は死にたくないから感じるのだろう。
俺はそう感じることもなく、動けないという現状を受け入れた。
(早く死んで楽になりたい…)
何も感じることができなくなった体で死を待つ。
が、いつまでたってもその瞬間が訪れる気配がない。
どういう訳だか眠気すら感じない。
むしろ頭の中が冴えてくるのを感じる。
ふっと昔やっていたボクシングのスパーリングを思い出す。
グラブの中の汗臭さは大嫌いだったが、こうしようというプランのままに動けた快感は忘れられない。
相手のパンチは見てからじゃ避けられないぞ!と中年のコーチは言ったが、初めてのスパーの最初の数秒で、見てからの反応で充分に間に合うことが分かった。
相手を見ることを放棄する指導に呆れた俺は、コーチにその事を指摘した。
次の日から何も教えてもらえなくなったっけ。
でもそんな事はどうでもよかった。
自分よりもずっと先にボクシングを始めた相手の動きが読める。
鍛え上げられた男達が弱気な表情となり肩で息をして目の前にいる。
人間の体の構造からパンチの軌道を考えれば、危険な範囲は思った以上に限られている。
なのになぜみんな危険な場所に平気な顔をして入ってくるんだろう。
不思議で仕方がなかった。
小さなジムで天下を取った気分になったままボクシングに飽きた。
あの経験が堕落のキッカケだった。
人から素直に教わるという当たり前のことができない俺はどんな仕事も続かなかった。
女はいたが屁理屈ばかり言う俺からみんな数ヶ月で去っていった。
今こうして死を待っている自分。
あの時、どうすればよかったんだろう…。
灰色の空間…。
そういえば、実写でボクシングってゲーム、あのゲームの背景ってどんよりとした灰色だった。
チュートリアル(基本技術の習得)すらクリアーできなかったっけ…。
だってよ、実際のボクシングと全然違うんだもの。パソコンのキーボードでボクシングができる訳ないだろっての。
もうすぐゴールデンウィーク、だからなんだってたんだ。くそぅ…。
心残りがあるとすればあのゲーム、せめて基本技術の習得を…。
(ピクリと指が動いた)
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実写でボクシングとは…
2Dタイプのボクシングゲームでネット対戦に対応しており、2004年にはHSPプログラムコンテストにて最優秀ゲーム賞を受賞しています。
リアルタイムに反映される世界ランキング・チャンピオンベルトを巡るタイトルマッチなどにより日々100~300のスパーが行われています。
ネット対戦に参加するには、オフラインモードで基本技術の習得をする必要があります。フリー版と銘打ってありますが、ほぼ制限なくネット対戦を楽しめますので、興味のある方は気軽に挑戦を!
実写でボクシング公式HP
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最近になって実ボクやり始めた者です。
返信削除それで気になってHPにたどり着き、こうしてブログを見ているわけですが・・・
最初本気で心配しましたよ!wサンドバックさん大丈夫かなとw
ネタのようだったので本当に安心しました!今度はスパ天で会いましょう!
こーた君、どもー!
返信削除時々ショートショートとして創作実ボク勧誘文章を書いています。
ひょんなことから検索で自分の書き込みが引っかかったりするので、もしかしたら遠い検索から実ボクユーザーになってくれる方もいるのでは…と淡い希望で書いています。
今後ともよろしくね♪