「あはは、そりゃ最高だね。
じゃ、10分後に図書館の正面玄関で待ってるよ。
もう夜10時だから閉館しているけど、噴水の所まで入っていけるから…
そうだ、赤いバラが目印だからね♪」
笑顔満面で君は電話を切ると、ふぅーと大きく息を吐く。
今回も受話器越しだと会話は最高に盛り上がったけれど…
これまで何度こうやって女性と待ち合わせの約束をしてきただろう。
どうゆうわけだか、待ち合わせ場所で相手と会えた試しがない。
この街で図書館はあそこだけ、待ち合わせには最適なんだけど…。
なぜなんだろう?
君は鏡の中の自分を見る。
黒いレザーでこしらえたヘッドギア、その奥で怪しく輝く眼光。
通気性に優れたトレーニングウェアーはブラックに鮮やかな白ライン。
両拳には相手を傷つけないため、慈愛に満ちた20オンスグラブ。
気分によってグラブの色は変えるけれど、今日は赤、かな♪
うっとりしながら君は心の中でつぶやく。
(完璧だ…)
おっと、赤いバラを忘れてた。胸につけようと思ったが、グラブ装着後に細かい作業はできない。仕方がない、今夜もくわえていくか。
図書館の前でバラをくわえてシャドーボクシングする男。
さて今夜の女性は声をかけるだろうか…?
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