2011年11月22日火曜日

実ボク ショートショート(1) 「初対面」

私がスパー天国に入室すると、ボク街王者のずんどこが待っていた。

ヨンドバック:ども~
ずんどこ:あ…
ずんどこ:待っていました。
ヨンドバック:タイトルマッチだね!
ずんどこ:そうなんですけど、実は
ずんどこ:相談したいことがあるんです。
ヨンドバック:ハタチの若者の悩み、なんだって聞きますよ~
ヨンドバック:なんだい?
ずんどこ:ありがとうございます。
ずんどこ:実は俺、16歳になる彼女がいるんですけれど、
ヨンドバック:うんうん、青春しとるの~♪
ヨンドバック:若いうちはのびのびしなさい!
ずんどこ:どうやら妊娠してしまったようなのです…
ヨンドバック:そうか…
ヨンドバック:結婚したまえ! 早いほうがいい!
ずんどこ:やっぱりそうですかね
ヨンドバック:そりゃそうさ、若い結婚、おおいにけっこうじゃないか♪
ずんどこ:ただ彼女のお父さんにまだ会ったことがなくて
ずんどこ:なんて伝えたらいいのか…。なんていうか怖くって…。
ヨンドバック:彼女のことを愛しているんだろ?
ずんどこ:はい! そこんとこは自信があります!
ヨンドバック:じゃ自信を持って言うしかない! なんたって愛の結果なんだから!
ヨンドバック:恥じることじゃない、勇気を持つんだ~! ずんどこっ!
ずんどこ:はい、わかりました。そうですよね。じゃ勇気を出します!
ヨンドバック:んだんだ♪

世代を超えた二人の間に温かい男の絆が感じられた。
なんて素敵な時間だったんだろう…

ずんどこ:では聞いてくださいね
ヨンドバック:ん? まだあるのかい?
ずんどこ:はい、ここからが本番です!
ヨンドバック:なんでもいいたまえ!
ずんどこ:…
ずんどこ:お父さん、娘さんをボクにください!
ヨンドバック:へ?

世代を超えた温かい男の絆は一瞬にして変質した。
完全に私の思考は停止、チャットを打つ気が失せてしまった。

そういえば最近、やたらと派手な化粧をするようになったっけ…
そういえば最近、娘の帰りが深夜になることが多かったっけ…

無言のまま私は「リングを作成」のボタンをクリックする。

0番リングの上で怖い顔のヨンドバックが待っている!
(さあ来い、ぶっとばしてやる…!)

ずんどこ:いきます!
ずんどこ:お父さん、私が勝ったら娘さんを頂きます!

数秒後に鳴るゴング。数分後に決まる決着。
これまでにない、熱いスパーとなるだろう…!

(お・と・う・さ・ん・と・よ・ぶ・な!)

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