2002年の発表当時はHSPユーザーの間でかなりの反響があったと記憶しています。
が、年月が経過し、ついに「O2システムのサービスを終了します」と公式サイトよりアナウンスがありました。
思わずツイートしました。
O2システムの運営が終了するそうです。
私は年をとっても大好きなボクシングができるよう、ゲームでボクシングを再現しています。まさか世界中の人と戦えるようになるとは…。
ひとりの人間の夢を叶えてくれたO2システムに感謝です。ありがとうございました!
(サンドバック)
ツイートしましたが、湧き上がってくる感謝の気持ちは140文字(ツイッターの制限)では収まりません。このブログにしっかり書き残したいと思います。
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現在はネット対戦が当たり前のように実装されている私の自作ゲーム「実写でボクシング」ですが、元々はオフラインモードしかないゲームでした。
2004年のコンテストで最優秀ゲーム賞を受賞、2005年には100円ショップダイソーで販売されるなど、個人製作のゲームとしては異例の盛り上がりを経験し、開発者として充分すぎるくらいの満足感を感じていました。
公開から3年目となる2006年頃には、過去に自分で運営した西沢ジムを「ゲームとして再現する」という目的がほぼ終わり、バージョンアップもそろそろ一段落…と感じていました。
readme.txtに「今回が最終バージョンです」と追記するためダブルクリック。
コンテストの締め切り直前、忙しかった時期に記したので散らかったreadme、改めて読み返すとなんとも熱い内容。ジム運営の閉鎖により、行き先を失ったボクシングへの情熱が熱く刻んであるテキストだった。
懐かしい気持ちで読み進めていき、終盤に差し掛かったところでギクリ。
忘れていた、いや! 本当は覚えていたけれど忘れたふりをしていた一行から視線を動かせなくなってしまった。
「将来の夢…ネット対戦を実現させる」
一瞬、ドラッグしてこの一行をDeleteしようかと逃げの気持ちが頭をよぎる。
通信系のプログラムは専門用語が多いため理解するだけでも難しく、私のような趣味プログラマーの手に負えるものではないのだ。
そもそも当時、他のフリーソフトでもリアルタイムでネット対戦を実現しているゲームはほぼなかったと記憶している(LAN接続による限定的なネット対戦はあった)(将棋のようなターン制ゲームではあった)。
できもしないことを夢として書いた一行。小学校の卒業文集に「将来の夢…世界チャンピオンになる」と書いたのを思い出す。
マウスでドラッグする。消そうとした一行が青くなる。
「将来の夢…世界チャンピオンになる」
なぜかボクシングに適正があった。生まれて初めて自分に向いていると実感したスポーツだった。
しかし、体の出来上がったジム頭達が負けて帰ってくるプロの世界で、自分が通用しないだろうという確信が常に頭にあった。
徐々に長いラウンドを要求される日々、(どうやって期待された状態で辞めようか…)そればかり考えていた。
最終的に周囲の大人を批判して、自分のエゴを守って逃げたズル人間。
人に言われれば「だってプロボクサーなんて食っていけないんですよ?」と涼しい顔。
言い訳して困難から逃げたのにそれすら正当化している自分のズルさをずっと自覚しながら生きてきた。
「将来の夢…ネット対戦を実現させる」
…。消せない。どうしても消せない。
生まれて初めて人に評価された作品。ここから難しくなりそうだなという場面で逃げようとしている。俺、実ボクでもボクシングと同じことをしようとしている。
(…俺は実ボクのネット対戦を絶対に実現させる!)
O2システムとHSPを組み合わせることで、オンラインゲームの開発環境を実現できます。
いままでサーバーを用意するための設備投資が必要だったオンラインゲームの開発を、サーバーの使用も含めてフリーで提供します。

O2公式サイトに記してあった上記の文面が、無知な私にどれだけ希望を与えてくれたか。
知識不足により専門用語が分からず手探りのスタート。
ネット上で質問しようにもなにから質問したらいいのかすら分からない状態でした。
唯一の光は開発キット内に用意してあった五目並べのサンプル。何度も参照して、これはこういう意味か、ここを変えるとこうなるのか、と理解していく。

ソースの中に記してある説明コメントが無知な私に歩み寄ってくれているのに、それすら理解できない自分が悲しいほど力不足だと痛感する。
もし、このレベルの練習生が私のジムに来たら「君には難しいかもしれないね」と伝えてしまったかもしれない。
プログラミングの知識や適正のない私でしたが、幸運なことに仲間に恵まれました。実ボク掲示板に連日書き込まれた励ましは、逃げようとする私の背中を押し続けてくれました。
特にプログラムに詳しい鳳蛋氏にはお世話になりました。五目並べを改造したサンプルソースを頂き、ついに小さな四角をサーバとクライアントで動かせた時の手応えは忘れられません。
(あとはこの四角がボクサーになればいい…!!)
数ヵ月後、私の夢は実現に至りました。
今では世界中のユーザーが仮想空間で拳を振るいあっています。これは HSP言語、およびO2システムのおかげです。

ホントーーーーーっに、ありがとうございました!
追記…当時、HSPの初心者向けサイトや質問掲示板にかなり助けられました。質問掲示板からは、問題の原因を発見するコツを教わったように感じます。
HSPプログラマーの皆さんがネット上に残した数々の記述に感謝しています!
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この記事の数年後となりますが、無償でネット対戦の場を与えてくれたO2システムへの恩返しとして、私が運用している自宅サーバを使って、HSPプログラマーに無料のサービスを提供することにしました。
あなたの自作ゲーム(HSP製)にスコアランキング、もしくはタイムアタックランキングを実装しませんか?
私自身も手探りですが、興味のある方は連絡ください。
この投稿は Hot Soup Processor Advent Calendar 2016 の 13日目の記事です。
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返信削除-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
トホホッティー @tohohotti
O2システム最初登録だけして、その後現在まで放置していました。自分は使いこなせてなかったですね。
システム利用したゲームを作られておられるのには頭がさがる思いですね。これからもいい作品をお作りください。
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しじみ @joshandbilly
プログラミングへの情熱がビシビシと伝わりました。
私もプログラマー(SE)の端くれですが、「コメントすら理解出来ない」との部分には「あったあった」と苦笑いです(^_^;)。
しかし夢を叶えたその「努力」は本当に素晴らしいことです。